P1060081 (3)

 

大学で知り合った友人は、当時からべらぼうに料理が上手だった。
ときどき部屋でご馳走になったが、料理中、火の通り具合や塩加減は匂いでわかると言っていた。
その頃の私はというと、久々に米櫃(にしていた煎餅缶)を開けると無数の羽虫が飛び立ったり、久々に炊飯器を開けると腐海が誕生していたり。
そんなありさまだったので、素直に感服しながらも「毎日やってれば、私にもわかるのかな」とぼんやり思っていた。

いやいや。
そんなわけがあるかと。

匂いですよ?
火の通りはまだしも塩加減ですよ?
邪悪な何かに魂を売るとかしないと無理無理、私の場合。
毎日料理をするようになって一ヶ月ほどで、早々に諦めがついたように思います。

揚げ物はできるだけやりたくないし味の決定もその辺にいる人に任せたい。
鍋やフライパンを前にどことなく卑屈なこころもちで中の様子をうかがう一方、千切りとかみじん切りとか、皮剥き、筋取り、その手の作業は大好きでした。元来単純作業向きなのでしょうね。

なめろう、つみれ、鶏団子。
好きな作業目白押しのトップ3です。
つみれと鶏団子、あとは誰か茹でてください。

いつだったかその友人が我が家でご飯を食べながら、「下ごしらえが丁寧で美味しい」と褒めてくれたことがあって、なんだかすごく嬉しかったです。

料理は匂いと下ごしらえが大事、ということではなく、「ああ、魂売らなくてよかった」という話でした。

 

P1060132

包丁にくっついたネギの形から生まれた“KOGUCHI”。