Q&Aのような

先月末の受注販売会はたくさんの方に足を運んでいただき、無事終えることができました。
本当にありがとうございました。
会期中、アクセサリーについてはもちろんですが、それ以外にも多くのご質問をいただいたので、この場でいくつかお答えしたいと思います。

まず、「tagotto」という屋号について。
ブログの一番最初に書いたつもりでいましたが、読み返したら全然書いていませんでした。

無題
かれこれ5年以上前、手仕事関係で屋号を持ちたいと思い、考えた末に決めたのが「tagotto」でした。
以下、辞書からの引用です。

た-ごっと【手事】(名)①手先を動かしおこなうことの総称。また、その成果。主に特別な技術、設備を必要としないものを指す。たごと。②《間奏を意味する手事(てごと)の変化》息抜き、気分転換。

脳内辞書にしか載っていませんが、「特別ではない日のために楽しみながら手を動かす」という活動テーマをtagottoという架空の言葉に込めています。

 

次に、看板代わりに会場に持ち込んでいた「手」について。

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この素敵な一枚は渡邊加奈子氏の作品、その名も「Hand」です。
温度、湿度、匂い、そして記憶を纏う彼女の木版画が好きで、tagottoのロゴも彼女に作ってもらいました(今思うと、よくそんな横着を…と青くなりますが)。

いつかのどこかでこの小さな手を持っていた彼/彼女が、のちにその手で為したこと、為せなかったことについて想像すると、背筋が少し伸びます。
看板というよりもお守りのような、同時に警策(座禅のときのアレです)のようなものです。

 

そして最後、受注時に個人情報を書いていただくためのペンを立てていた糸巻きについて。

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趣味で糸を紡いでいるので、うちにはやたら糸巻きがあります。
実家がむかしむかし繊維工場をやっていたので親にもらったものもありますが、このふたつはかつて西荻にあった家具屋さんで買いました。
糸巻きとしては重いので、普段は工具を挿しています。
以上、特に伝えるべき情報はないのですが、「それは買えませんか?」と何度も言われてちょっとシュンとしたので、もう販売会には持っていかないと決めました。

 

でも、なんというか、木と金属の組み合わせっていいですよね。

アシンメトリーの憂鬱

tagottoではほとんどのイヤーアクセサリーを片耳ずつ販売しています。
お手持ちのアクセサリーに合わせてご利用いただければ、色合わせや形違いでも楽しんでいただければ、と思っています。

というのは今考えた理由で、本当は、私が両耳に同じピアスを付けられない。
なぜなら耳の位置が左右対称ではないからです。

昔はその事実にまったく気づいていませんでした。
小三の頃からメガネをかけているのですが、メガネが斜めになるのはメガネが斜めだからだと思っていたのです。

余談ですが、当時クラスにメガネの同級生はいなかったので、初めてメガネをかけて登校した日、それに関して言われそうなことはすべて言われました。

メガネザルとか。
アラレちゃんとか。
斉藤ゆう子とか。

あ、知ってます?斉藤ゆう子さん。
ヒントでピントですよ。
メガネの女性タレントなんて他にもたくさんいただろうに、とっさに「斉藤ゆう子みたい」と言った同級生のセンスに脱帽です。

まあ、どうでもいいですけど。

閑話休題。

ピアスをするようになって初めて、ずれているのは耳のほうなのだと知りました。
ナチュラルボーンアシンメトリーなのだと。
両耳に同じピアスをつけて鏡を見ると不安定な気持ちになるので、自覚してからは片耳のみに装着することが多くなりました。
片耳だけなら買うのにな、と購入を諦めたこともありました。
しょうがない、ナチュラルボーンアシンメトリーだからと(気に入ったので2回言う)。

そんな当時の自分のためにも、片耳ずつの販売にはこだわっていきたいのです。

 

 

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こっそりと告知します。

今週末、3月24日から26日まで、ケーキとコーヒーの美味しい場所でtagottoの受注販売会をさせていただきます。
このブログを単独でご覧いただいている、かつ関東近郊の方がもしもいらっしゃいましたら、以下より詳細をご覧いただき、足を運んでいただければ嬉しいです。

https://www.facebook.com/tagotto/

ささやか再考

『ささやかだけれど、役にたつこと』というレイモンド・カーヴァーの短編小説があります。
ある家族と、パン屋のおじさんの物語。

原題は『A Small, Good Thing』。
好きな短編で、接客業をしていた頃は常に頭の隅に置いていたくらいです。
想像力とプライド、という点において。

それはそうなんですけれど、同時にずっとモヤモヤしていたことがあり、その話を書きたいと思います。

 

※以下ネタバレ&雰囲気バレ注意、です。

個人的に『ささやかだけれど、役にたつこと』と言われてイメージするのは、たとえばこういうことです。

・台所のシンク下にゴーグルを吊るしておけば、泣きながら玉ねぎを切らずにすむ。

・トンカチを2本持っていれば、釘を打っているときに万が一トンカチの頭がすっぽ抜けて飛んでいっても、そのトンカチを直すためのトンカチを買いに行く必要がない。

どちらも私の体験談で、そんな小説を読みたい人がいるかどうかはさておき、『ささやか』には「いやね、あらためて言うほど大したことじゃないんですけどね」感が大事なんですよ、あくまで個人的にですけども。

お読みになった方はご存知のとおり、カーヴァ―の短編はまったくそんな話ではありません。
そんな話だと思って読み進むと、胃がきりきりします。
少なくとも私は初読できりきりしました。
そう、この憤懣やるかたないモヤモヤは一言で言えば「ささやか要素、ゼロやん」ということです。

実際の内容は割愛しますが、象徴的な最後のシーン。
暗闇のさなかにあって、——それがパンであれケーキとコーヒーであれカツ丼であれ——誰かと何かを食べて美味しいと思えて救われるのは、この世でもっとも大切なことの部類に入ると思うのです。
今日もどこかで美味しいものを作っているすべての人に感謝したいほどに。
それはちっともささやかじゃない、と15年以上も憤慨し続けているほどに。

ちなみに、このブログにはそんな大切な話は出てきません。
本当にちっさいことしか書きませんよ、という念を押したくて、サブタイトルが言い訳がましくなってしまったこともついでに告白しておきます。

 

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嘘をついてごめんなさい。
本当は4本ありました。

あえて言うなら愛情です

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大学で知り合った友人は、当時からべらぼうに料理が上手だった。
ときどき部屋でご馳走になったが、料理中、火の通り具合や塩加減は匂いでわかると言っていた。
その頃の私はというと、久々に米櫃(にしていた煎餅缶)を開けると無数の羽虫が飛び立ったり、久々に炊飯器を開けると腐海が誕生していたり。
そんなありさまだったので、素直に感服しながらも「毎日やってれば、私にもわかるのかな」とぼんやり思っていた。

いやいや。
そんなわけがあるかと。

匂いですよ?
火の通りはまだしも塩加減ですよ?
邪悪な何かに魂を売るとかしないと無理無理、私の場合。
毎日料理をするようになって一ヶ月ほどで、早々に諦めがついたように思います。

揚げ物はできるだけやりたくないし味の決定もその辺にいる人に任せたい。
鍋やフライパンを前にどことなく卑屈なこころもちで中の様子をうかがう一方、千切りとかみじん切りとか、皮剥き、筋取り、その手の作業は大好きでした。元来単純作業向きなのでしょうね。

なめろう、つみれ、鶏団子。
好きな作業目白押しのトップ3です。
つみれと鶏団子、あとは誰か茹でてください。

いつだったかその友人が我が家でご飯を食べながら、「下ごしらえが丁寧で美味しい」と褒めてくれたことがあって、なんだかすごく嬉しかったです。

料理は匂いと下ごしらえが大事、ということではなく、「ああ、魂売らなくてよかった」という話でした。

 

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包丁にくっついたネギの形から生まれた“KOGUCHI”。

ヨレT星の住人と、その家族に捧ぐ

放っておくと何年でも同じTシャツを着続ける人たちがいます。
それは斬新なイラストのついたよそ行きTシャツではなく、特に品質のいい肌着Tシャツでもない。
たとえば3枚980円といった、いわゆる消耗品のTシャツです。

襟ぐりなど、とうにヨレヨレで擦り切れています。
「いい加減捨てたら」と提案すると、「苦労してやっとここまで育て上げたのに」と言わんばかりに憤慨します。
切り札「みっともない」をくり出そうものなら、まるで人間性を全否定されたかのような顔をします。

面倒くさいですね。
わかります。
我が家にもその星の人がいます。

仕方がないので、折衷案としてヨレT数枚で枕カバーを作りました。

彼らは丹精の賜物であるヨレクタな肌触りを失わず、われわれも来るべき「事ここに至るまで放置した自分を悔やむ日」に怯えずにすむ。
多少縫いにくくはありますが、上手くいかなくてもまるで気にならないという利点もあります。

枕カバーでも、クッションカバーでも、布団カバーでも。
ヨレTの在庫量に応じて、作ってみてください。
ちなみにサイズはかなり小さめで大丈夫ですよ。
際限なく伸びますから。
そしておそらく、ワンシーズンくらいで破れます。
なんせ元がヨレTですから。

もう、心おきなく捨ててください。

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