あえて言うなら愛情です

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大学で知り合った友人は、当時からべらぼうに料理が上手だった。
ときどき部屋でご馳走になったが、料理中、火の通り具合や塩加減は匂いでわかると言っていた。
その頃の私はというと、久々に米櫃(にしていた煎餅缶)を開けると無数の羽虫が飛び立ったり、久々に炊飯器を開けると腐海が誕生していたり。
そんなありさまだったので、素直に感服しながらも「毎日やってれば、私にもわかるのかな」とぼんやり思っていた。

いやいや。
そんなわけがあるかと。

匂いですよ?
火の通りはまだしも塩加減ですよ?
邪悪な何かに魂を売るとかしないと無理無理、私の場合。
毎日料理をするようになって一ヶ月ほどで、早々に諦めがついたように思います。

揚げ物はできるだけやりたくないし味の決定もその辺にいる人に任せたい。
鍋やフライパンを前にどことなく卑屈なこころもちで中の様子をうかがう一方、千切りとかみじん切りとか、皮剥き、筋取り、その手の作業は大好きでした。元来単純作業向きなのでしょうね。

なめろう、つみれ、鶏団子。
好きな作業目白押しのトップ3です。
つみれと鶏団子、あとは誰か茹でてください。

いつだったかその友人が我が家でご飯を食べながら、「下ごしらえが丁寧で美味しい」と褒めてくれたことがあって、なんだかすごく嬉しかったです。

料理は匂いと下ごしらえが大事、ということではなく、「ああ、魂売らなくてよかった」という話でした。

 

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包丁にくっついたネギの形から生まれた“KOGUCHI”。

ヨレT星の住人と、その家族に捧ぐ

放っておくと何年でも同じTシャツを着続ける人たちがいます。
それは斬新なイラストのついたよそ行きTシャツではなく、特に品質のいい肌着Tシャツでもない。
たとえば3枚980円といった、いわゆる消耗品のTシャツです。

襟ぐりなど、とうにヨレヨレで擦り切れています。
「いい加減捨てたら」と提案すると、「苦労してやっとここまで育て上げたのに」と言わんばかりに憤慨します。
切り札「みっともない」をくり出そうものなら、まるで人間性を全否定されたかのような顔をします。

面倒くさいですね。
わかります。
我が家にもその星の人がいます。

仕方がないので、折衷案としてヨレT数枚で枕カバーを作りました。

彼らは丹精の賜物であるヨレクタな肌触りを失わず、われわれも来るべき「事ここに至るまで放置した自分を悔やむ日」に怯えずにすむ。
多少縫いにくくはありますが、上手くいかなくてもまるで気にならないという利点もあります。

枕カバーでも、クッションカバーでも、布団カバーでも。
ヨレTの在庫量に応じて、作ってみてください。
ちなみにサイズはかなり小さめで大丈夫ですよ。
際限なく伸びますから。
そしておそらく、ワンシーズンくらいで破れます。
なんせ元がヨレTですから。

もう、心おきなく捨ててください。

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ステンレスとチタンの話

tagottoが作るアクセサリーには、いくつか決まりごとがあります。

軽いこと。
カラフルなこと。
金属の使用は最小限であること。
など。

今日はそのなかの『金属』についてのお話です。

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個人的なことを言えば、私は金属アレルギーではありません。
でも花粉症しかり、食物アレルギーしかり、平気だったものが突然まったくダメになってしまう経験を繰り返してきましたので、何アレルギーであれ可能なら避けたいという気持ちはあります。
図らずも樹脂と絹糸という素材で始めたアクセサリーなので、金属アレルギーをまったく気にしていない方はもちろん、私のように漠然と不安を持っている方、そしてできれば既に発症してしまった方にも使っていただけるものを、ひとつでも多く作りたいと思っています。
そのために、肌に直接触れる部分においてはできるだけ金属を使わず、使用する場合にはサージカルステンレス(SUS316L)、またはチタンに限定しています(アレルギーの方には金属フリーのアイテムをお勧めしています)。

なぜステンレスとチタンなのか?

以下、ずぶの素人がしどろもどろに化学的な話をしますので、興味のない方は遠慮なくタブを閉じてくださいね。

そもそも、金属アレルギーを引き起こしやすい金属か否かは、ざっくり言えば「溶け出しやすいか否か」。
汗などによって溶け出した金属が体内に入り、タンパク質と結合してアレルゲンになるのです。

水銀、ニッケル、コバルト、スズ、パラジウム、クロム…
このあたりがアレルギーを起こしやすいと言われている金属。
ちなみ飲料水などに含まれるミネラルはバナジウム。ややこしいですね。

逆に金や銀そのものは溶け出しにくく、アレルギーになりにくい金属。
ただ純金(24K)、純銀(SV1000)のアクセサリーは少なく、混ぜられている金属や変色予防のメッキ下地にニッケルやパラジウムが使われている場合があり、注意が必要といえば必要です。

で、やっと本題。
ステンレスとチタンは?

ステンレスは鉄にクロムとニッケルを混ぜた合金で、原料は前述のとおりアレルギーになりやすいもの。
でも、その配合によって表面に「不動態皮膜」というバリアーを作り、変質しにくい特長を持っているのです。
錆びにくい、傷つきにくい、溶け出しにくい、アレルギーを起こしにくい。
なかでも医療器具にも使われるサージカルステンレス(SUS316L)は特に強固で、tagottoではピアスのポスト、キャッチをはじめ、金属パーツのほとんどに使用しています。
チタンも同様に不動態皮膜があり、むしろステンレス以上に耐久性もあってアレルギーになりにくいらしいのですが、パーツの種類も少なく、今のところフックピアスのみ使用しています(今後切り替えることがあるかもしれません)。

 

以上、化学っぽい話を終わります。
念のために言いますが、私は高校入学とほぼ同時に理系科目を全捨てした人間です。
どこかでお会いしても、イオン化傾向とかモリブデンと耐食性の関係とかについての質問は聞こえないフリをしますので、ご了承ください。

さて。
これだけ書いておいてなんですが、「これは…もしかして不安商法?」という不安に苛まれてきたので、最後に。

金属アレルギーへのスタンスは人それぞれであってしかるべきです。
どうか上記の文章はいったんすべて忘れていただいて、その上で、それでも選んでいただけるようなものを作っていきたい。
そう思っています。

でもこういったマテリアルの話は楽しいですね。
懲りずにまた、次は絹あたりで書いてみたいです。

 

「どうせ転ぶ」という前提が救うもの

小さいころ、新しいノートを買ってもらうと嬉しすぎて緊張し、なかなか使い始めることができませんでした。
肩に力が入っているものだから、いざペンを執ると自分の名前ですら間違えたり、なんかちょっと歪んだり。
そしたらもう辛くて、一転して見るのも嫌になってしまう。
子どもながら、このまま大きくなったら大変だぞ、と思ったかどうかは覚えていませんが、悲しいかな今でも新しいものが少し苦手です。

でも、そうそう緊張していられない。
いつからか開き直ったことで、ものとの付き合いがずいぶん変わりました。
そう。直せばいい。

ちょっとセンシティブぶって書きましたが、要は昔から落ち着きがないのです。
字は間違う。物は壊す。服は汚す。歩けば転び、走ればぶつかる。
注意力や空間把握能力を鍛えるよりは、直す方法を模索するほうが気が楽でした。
転ばぬ先の杖はたとえ電車に置き忘れても、転んだ先にはマットがあることを知っている安心感。
直すのが楽しくなってくれば、もう怖いものはありません。

もし似たような方がいらっしゃれば——きっとたくさんいらっしゃると思うのですが——、心の底からおすすめします。
直せばいいのです。

 

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取れなかった染みを水玉で隠すの巻。

てぶクロニクル

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高校生のころ、Oliveに載っていたミトンが可愛かったので真似て編んで親指で挫折したと思われる、残骸(左手のみ)。
今年のお正月に実家で見つけました。
もう名前もわからないこの糸、可愛かったけれどその後見かけたことがないので廃番なのでしょう。
残念至極。

 

 

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6年前に夫に編んだ手袋。
THEシンプル。
たた&たた夫さんで2本の輪針を使う編み方を知り、初実践したもの。
装着したままスマートフォンが操作できるよう、後日指先を加工しました。

 

 

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一昨年春、友人の依頼で。
色、デザインを指定してもらい、楽しく編みました。
このとき「爪は蛍光の黄色で」と言われてネオンカラー毛糸の種類、発色を調べに調べた経験が、その後とても役に立ちました。

 

 

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去年自分用にかぎ針で編んだもの。
数年来の個人的ブームだった引き上げ編みをふんだんに使った、というかオール引き上げ編みの手袋。
精度はともかくスマホも反応してくれる仕様で、ピースはできないけれどオーケーはできる。
気に入っています。

 

とりあえず、手元に画像があるものは以上。

どれもまったく違うようで、すべてがちゃんと最後のひとつに繋がっていて興味深いです。