手しごとまわりのこと

テーブルクロスと友人

古いものが好きなので、古道具屋も骨董市もよく行きます。
ひとつの業種の商品だけ無料で買い物できる権利、みたいなのが与えられるとしたら、迷わず「古道具」と言います。
…いやまて、現実的に考えたら食料品かな。衣料品かな。
いやいやここは古道具で。

結局迷いましたが、それぐらいには古道具が好きです。

10代終わりの年、最初にひとり暮らしを始めた街で、小さなテーブルクロスを買いました。
とても古いフランスのもので、ナガミヒナゲシのような卵色も、柔らかくくたっとした手触りも忘れがたく、数回通った末に思い切って購入しました。
それが、最初に買った「古いもの」です。

 

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ちゃぶ台の上でテーブルクロスとして使い、文庫本を収納していた本棚の日除けとして使い、見ていないときのテレビカバーとして使い、最近は風呂敷として使っています。
シミもほつれもたくさんできました(ちゃぶ台時代にさんざんお茶もコーヒーもこぼした)。
色も、ナガミヒナゲシをドライにして数年日晒しにした感じに退色してしまいました。
それでも、とても好きな、大事な布です。
運針で補強したり、布を当てたり、刺繍したり、古いドイリーを切って重ねたりして直しながら、今も頻繁に使用します。
見るたびに「やっぱり好きだなあ」と思います。

 

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写真を撮るために軽くアイロンをかけたら、角の縫い目が破れました。
繊細か!
また直さなきゃ(でもそれも嬉しい)。

 

 

シュッとしつらえられたこだわりの古道具屋さんはもちろん大好きですが、わけのわからないガラクタが所狭しと積み重なっているような、このオヤジ(店主)はどうやって生活しているの?遺産か?不動産か?と下世話な想像が止まらない類の謎の古道具屋さんにも、よく行きます。
これは、上記のテーブルクロスを買って間もなく知り合った友人——このブログでもちょこちょこ書いている、料理上手前世が美男子音楽家の友人——の影響で、大学時代には高架下の怪しげな古物街や古着屋、上京してからもリサイクルショップやバザーによく一緒に行きました。
キャッキャ言いながら上がりきったテンションのままに5分後には後悔するような買い物も何度もしましたが、そんな日々によって私の古いもの好きは定まっていったのだと思います。

 

 

先日、その友人が遊びに来てくれました。
駅近くの店でお昼ご飯を食べてから、我が家でお茶を飲みつつこちらの銘菓を食べつつ延々話をしていただけですが、長い付き合いの年月を振り返らずにはいられないような時間でした。

ところで、「これ、この前友達にもらったんだー」と言って見せた床の間に生けた3本のハスの実、「やっぱりちょっと捻った生け方するよね、さすが。面白い」とだいぶ褒めてくれたよね。
あれ、輪ゴムで適当にくるくるっとまとめたらああなっただけなんだ。
言い出せず、「お、おう…ありがと」と見栄をはってごめんなさい。

これからもよろしく。

9月の夜長の頭のなかは

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誰かに聞いてみたいと、もうずっと思っていることが幾つかある。

日常では耳にしないのに、なぜフィクションに登場するおじいちゃん(やときにおばあちゃん)は語尾に「~じゃ」「~じゃよ」を付けるのだろう。
ためになることを言うときには特に。

時代劇や日本昔ばなしならまだわかる。
一人称が「拙者」の人や機を織る鶴にも会ったことがないから、トータルで納得できる。
ファンタジー色が強ければ、たとえば「うしおととら」において東の妖怪を統べる長が「~じゃ」を連発していても、「うん、言いそう」と思える。
でも実話をもとにしたヒューマンドラマや現代小説、あまつさえなにがしかの再現VTRなどにも、唐突に「~じゃ」じいちゃんは現れるから困惑する。
つい最近も某古道具屋を舞台にした小説を読んでいて困惑したばかりだ。

祖父をはじめ、かつて袖すり合ってきたおじいちゃんたちを思い浮かべてみる。
実家のご近所さん。
高校の生物の先生。
弁当屋でアルバイトをしていたときの常連さん。
学芸員の実習で話を聞いたお寺のご住職。
マンションの管理人さん。
文房具屋さんの店主。

確実に言ってない。
世間話も老馬の智も、誰もじゃよ調で言ってない。

となるとこれはもう、アレだろう。
きっと符丁のようなものなんだろう。
語尾に「~じゃ」を付けることでそのじいちゃんがただのじいちゃんではなく、千里眼か見識高き語り部か、何にせよありがたいことを進言してくれる特別なじいちゃんですよという印なのだ。
「帰ってきたらうがいをしなさい」ではなく、「帰ってきたらうがいをするもんじゃ」と言われたらもう、そそくさとうがいしちゃうもの。
数千年に渡る人々の営みとうがいの歴史を感じずにはいられないもの。

…ということで、日本に3人にひとりはいると思われる「~じゃ」が気になって仕方ない派は納得してくれるだろうか。
私はこれからも、漠然と困惑し続けると思う。

 

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スポーツ選手はどの段階でサインの練習を始めるのだろう。
オリンピックで金メダル取ったとき?遅すぎるな。
オリンピック出場が決まったとき?
野球なら甲子園?
「タッチ」で上杉達也が近所の人に頼まれて大量の色紙にサインをしていたのはいつだったっけ。
いや、それともあれは南ちゃんだっけ。

私は小学生のとき、スポーツ選手でも将棋の棋士でもクラスの人気者でもなかったけれど、「ある日サインを頼まれたら」「急ごしらえで書いたサインが超絶ダサかったら」という想像をして怖くなったことがある。
子どもの頃から一芸に秀でていればなおさらだろう。
だからきっと答えは「運動会でリレー選手に選ばれたとき」だと思う。
今も昔も世界中の小学生のノートには、無数の、誰にも見られることのない素敵なサインが並んでいるんだ、きっと。

 

 

読み返してみたら、「うしおととら」で「~じゃ」を連発していたのは西の長(若い方)、つまり方言でした。納得。
ちなみに画像は本文とまったく関係ないけれど、夏の間に縫った古布の暖簾と座布団カバーです。

 

夏の終わりに

前回投稿のあと、本格的な、長い長い梅雨が始まって終わり、夏が来て、さらに秋の気配を感じるまでに時間が経ってしまいました。
何をしていたかという話の前に、先週末、風鈴を買ったのでまずはそのご報告です。

以前書いたとおり、我が家にはすでに3つの風鈴があり、つまりこれは4つめの風鈴です。
たった今書いたとおり、秋の足音が近づきつつある今日この頃に、です。

いや、どうすんのこれ。

 

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自転車で、買い物がてら近所を散策していたわけです。
タオルハンガーとか、吊り下げられる大きな籠とか、座布団カバー用の古い布とかを買って「今日はこの辺で勘弁してやるか」的に自転車を流していたら、某ショップの店頭に並んだ風鈴を見て夫がいそいそと近寄っていきました。
お店は閉まっていたので残念そうでしたが、帰り道、偶然その風鈴を作っている工房前をとおりかかり、気づいてUターンする夫、追いかける私。
店主とのなんやかんやのコミュニケーションの末、4つめの風鈴が我が家にやってきたのです。
これはもう、仕方がないのです。

上の画像だと普通の風鈴に見えますが、実は意外とミニサイズ。

 

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銅製の愛らしいヤツなのです。
清涼感のなかにも情緒と奥ゆかしさのある音で鳴るのです。

ひとまず、工房名が入った短冊を、裾上げしたパンツの切れ端(今回もワックス処理済み)に変えてみました。
とても、よい。

先月から軒先で揺れているガラス製風鈴に早々に暇を告げるか、それとも来年の楽しみにとっておくか、悩ましいところ。
とりあえずしばらくは、これを持って家のなかをうろうろすると思います。

 

 

先月引っ越しをしました。

8年住んだ以前のマンションは、交通の便も暮らしやすさもあって大家さんが素敵なご夫婦で、何よりとても気に入っていた部屋だったので、後ろ髪を引かれる思いもありました。
近所には長い付き合いの友人、お世話になった商店街のコーヒー豆屋さん、美容師さんがいて、離れがたい街でもありました。

それでも、最初は一本だったこの新しい土地との縁の糸がここ数年でどんどん増え、彼女/彼らの存在があったことで不安なく転居に踏み切ることができました。
本当に稀な、幸せなことだと思っています。

おススメ物件情報をまめに連絡してくれたり、夫の通勤へのアドバイスをくれたり、近くへの引っ越しを笑顔で喜んでくれたり、内見に付き合ってくれたり、してくれて本当にありがとう。

見上げれば都庁、見下ろせば首都高という大都会のマンションから、とても静かな場所にある戸建てへ。
建物が古い、という以外はほぼ真逆の住環境となりましたが、みんなのおかげでとても快適に過ごせています。ありがとう。

 

 

心配事があるとしたら。

引っ越しを手伝ってくれたときに3つの風鈴を全部吊るそうとしていた友人に、4つめの存在がバレたらどうなるのか、ということくらいかな。

掃除機は片付けました

・虫よけ、鳩よけとしてベランダで育てているセンテッドゼラニウムが今年は例年以上にもりもり育ち、花もたくさん咲きました。
・それで気を抜いて窓全開で過ごしていたら室内にスズメが舞い込み、外へ逃がすため夫と二人でひとしきり走り回りました。
・母の日関連で実家に電話すると至近距離でウグイスが鳴いていて、「さすが田舎、部屋に入ってくる鳥もウグイスとは風流な」と思ったら父の口笛でした。
・父譲りの散らかし癖とデリカシーのなさは謹んで返上させていただきますので、代わりに口笛の才能をください、と布団のなかで神にお祈りしました。

 

ブログの更新、少し日が空いてしまいましたので、この春の我が家のダイジェストをお送りしました。

さて、なんだかよくわからないうちに真夏のような暑さになりましたが、皆さまはお元気にお過ごしでしょうか。
こちらは変わりなく、先月は販売会ご注文分の製作に励み、ありがたいことにその後もメールなどにてぽつぽつご注文をいただいています。
これなら着けられるとおっしゃっていただけるお客様も増えてきて、その理由は軽さだったり、本体や金属パーツの素材だったり、色やサイズのバラエティだったりと様々ですが、いやもうほんとに、もったいないことです。ありがとうございます。
何をどう書いても伝えられないとは思いつつ、tagottoにかかわってくださっているすべての方へ、感謝の気持ちを新たにしています。ありがとう。

ニヤニヤするな、調子に乗るなちゃんとしろ、とさっき使い終わったままの場所で横たわっている掃除機が申しています。
次へ向けての新しい糸もすでに手元にありますので、また気と顔を引き締めて取り組んでいきます。
まずは掃除機を片付けよう。

 

 

その前に、この時期恒例の繕い報告。

久々に靴下をダーニングで繕いました。
あと破れかぶれジーンズの補強もしました。

 

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しかしジーンズって衣類のなかでは断然丈夫なイメージなのに、なぜかすぐ破れますよね。
私のは膝、夫のはお尻回り。
しょっちゅう直してるような気がします。
洗濯もする派なんだけどなあ(洗濯しないと汗で生地が傷みやすいらしい)。

それから、2年前にウール50%ナイロン50%の糸でステッチした靴下、まだ現役でバリバリ履いてます。

 

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補修箇所、すっかりフェルト化しています。
密に縫い過ぎたせいでモリッとしちゃったけれど、快適。
ナイロン入りの糸はやはり丈夫ですね。

こちらからは以上です!

春と言えば

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最初に作った装身具は、ボタンのネックレスでした。
行った先々で買ったボタン、母の古いジャケットのボタン、着なくなった自分の服から取ったボタン。
それらを布に縫いとめ革に貼り合わせ、鎖を付けただけのネックレス。
糸でアクセサリーを作るようになる何年も前のこと、友人の結婚パーティで使うために作ったものです。
昨秋、このネックレスを久々に手にしたら、当時の状況がぶわっと蘇りました。

たくさんのボタンを何か形にしたくてずっとあれこれ考えていたことや、でも失敗して無駄にするのが怖かったこと。
ずっとぐたぐた手をこまねいていたときに踏み切れたきっかけが、友人の結婚を祝う気持ちだったのです。

少し大げさだと思われるかもしれませんが、好きなものを使って何かを作るとき、常に失敗を恐れる気持ちはあります。
今も、糸や布を無駄にしたらどうしようといつも思っているし、それでも失敗はする。ものすごくする。
自分がゴミ製造機に思えてへこたれることもしばしば。
けれど続けていられるのは、今作っているものは形を変えてもきっと誰かに届くという希望を持てているからです。

今年も3月20日から24日まで、逗子にてtagottoの展示受注販売会をさせていただきます。
4月から日常が大きく変化する人、ほんの少し変化する人、生活自体が変わらずとも、気持ちが何となく新たになる人。
そんな人たちの次の一歩を少し大きくできるようなものを、という思いで作ったアクセサリーを持っていきます。
それから、今年ははぎれの風呂敷なんかも。

今回で3度目となるこの販売会。
私の希望の主成分はこの機会、場所であり、ここでお会いする皆さまです。
春の逗子で美味しいコーヒーとケーキをご堪能いただいたのち、眺め、手に取り、試しに着けてみていただければ幸せです。

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