手しごとまわりのこと

必死のパッチってなんだろう

唐突に季節感ゼロの話ですが、Vネックのセーターが好きです。
ずいぶん昔、真緑のVネックセーターを持っていて、V深め、裾と袖口のリブ長め、胸ポケット付き、と好きな要素が詰まったお気に入りの一枚でした。
しょっちゅう着ていたので、当時からの友人は未だに「カエルセーター」と話題にします。

このセーターにはもうひとつ特徴があって、両肘に楕円形の革があててありました。肘あて、エルボーパッチですね。
デザインとしては可愛いのだけれど、これさえなければ気軽に手洗いできるのに、と少し残念でもありました。セーターの肘なんて、そうそう破れないし。

と思っていたら、肘を破く人がいました、我が家に。

「カーディガンの肘に穴が空いた…」と無念そうに言われたとき、とっさに件のVネックセーターを思い出し、肘あての提案をしたらずいぶん喜ばれました。
こんなこともあるのねと、薄い革でパッチを作り、穴が広がらないようステッチをかけてから縫い付けたのが一昨年のこと。
ご覧のとおり、革ごと洗濯しているのがバレバレな見た目ですが、今のところ問題なく使えているようです。

 

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で、今年、別のカーディガンにも穴が空きました。

え?また?
しかもまたカーディガン?
カーディガン着て匍匐前進でもしてるの?
外で七人の敵と戦っていることの体を張ったメタファーか何かなの?

次々ハテナが浮かびましたが、私がVネックセーターが好きなように、彼はタートルネックとカーディガンが好きなので、放っておくと下に着ているタートルの肘も破れかねません。
またあてますよ、肘パッチ。
そろりそろりと匍匐前進しているところを想像したら、かがる針にもリズム感が出るというものです。

 

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今回は古いベロアのパンツを切って使いました。
革を使うよりずいぶん作業は楽ちんです。
あ、洗濯もね。

他にも、コーデュロイやツイードのチェックなんかも良さそうですよ。
セーターやカーディガンの肘、いつも破れて困ります、という方はお試しあれ。

ヨレT星の住人と、その家族に捧ぐ

放っておくと何年でも同じTシャツを着続ける人たちがいます。
それは斬新なイラストのついたよそ行きTシャツではなく、特に品質のいい肌着Tシャツでもない。
たとえば3枚980円といった、いわゆる消耗品のTシャツです。

襟ぐりなど、とうにヨレヨレで擦り切れています。
「いい加減捨てたら」と提案すると、「苦労してやっとここまで育て上げたのに」と言わんばかりに憤慨します。
切り札「みっともない」をくり出そうものなら、まるで人間性を全否定されたかのような顔をします。

面倒くさいですね。
わかります。
我が家にもその星の人がいます。

仕方がないので、折衷案としてヨレT数枚で枕カバーを作りました。

彼らは丹精の賜物であるヨレクタな肌触りを失わず、われわれも来るべき「事ここに至るまで放置した自分を悔やむ日」に怯えずにすむ。
多少縫いにくくはありますが、上手くいかなくてもまるで気にならないという利点もあります。

枕カバーでも、クッションカバーでも、布団カバーでも。
ヨレTの在庫量に応じて、作ってみてください。
ちなみにサイズはかなり小さめで大丈夫ですよ。
際限なく伸びますから。
そしておそらく、ワンシーズンくらいで破れます。
なんせ元がヨレTですから。

もう、心おきなく捨ててください。

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「どうせ転ぶ」という前提が救うもの

小さいころ、新しいノートを買ってもらうと嬉しすぎて緊張し、なかなか使い始めることができませんでした。
肩に力が入っているものだから、いざペンを執ると自分の名前ですら間違えたり、なんかちょっと歪んだり。
そしたらもう辛くて、一転して見るのも嫌になってしまう。
子どもながら、このまま大きくなったら大変だぞ、と思ったかどうかは覚えていませんが、悲しいかな今でも新しいものが少し苦手です。

でも、そうそう緊張していられない。
いつからか開き直ったことで、ものとの付き合いがずいぶん変わりました。
そう。直せばいい。

ちょっとセンシティブぶって書きましたが、要は昔から落ち着きがないのです。
字は間違う。物は壊す。服は汚す。歩けば転び、走ればぶつかる。
注意力や空間把握能力を鍛えるよりは、直す方法を模索するほうが気が楽でした。
転ばぬ先の杖はたとえ電車に置き忘れても、転んだ先にはマットがあることを知っている安心感。
直すのが楽しくなってくれば、もう怖いものはありません。

もし似たような方がいらっしゃれば——きっとたくさんいらっしゃると思うのですが——、心の底からおすすめします。
直せばいいのです。

 

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取れなかった染みを水玉で隠すの巻。

てぶクロニクル

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高校生のころ、Oliveに載っていたミトンが可愛かったので真似て編んで親指で挫折したと思われる、残骸(左手のみ)。
今年のお正月に実家で見つけました。
もう名前もわからないこの糸、可愛かったけれどその後見かけたことがないので廃番なのでしょう。
残念至極。

 

 

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6年前に夫に編んだ手袋。
THEシンプル。
たた&たた夫さんで2本の輪針を使う編み方を知り、初実践したもの。
装着したままスマートフォンが操作できるよう、後日指先を加工しました。

 

 

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一昨年春、友人の依頼で。
色、デザインを指定してもらい、楽しく編みました。
このとき「爪は蛍光の黄色で」と言われてネオンカラー毛糸の種類、発色を調べに調べた経験が、その後とても役に立ちました。

 

 

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去年自分用にかぎ針で編んだもの。
数年来の個人的ブームだった引き上げ編みをふんだんに使った、というかオール引き上げ編みの手袋。
精度はともかくスマホも反応してくれる仕様で、ピースはできないけれどオーケーはできる。
気に入っています。

 

とりあえず、手元に画像があるものは以上。

どれもまったく違うようで、すべてがちゃんと最後のひとつに繋がっていて興味深いです。

ボーリングはガター

以前CINQさんで購入したSolwangのディッシュクロスがあまりにふかふか気持ちがいいので、思い立って自分でも編んでみました。

ガーター編みです。
小学生のころ、母に教わりながら初めて編んだのがガーター編みのマフラーでした。
ほぼそれ以来の、ガーター編みです。

ずっと手を出さなかった理由は、件のマフラーがひどい出来だったのと、(おそらくそのせいで)編み地にも野暮ったいイメージがあったから。
でも今回、目の詰まったガーターのテクスチャーに感銘を受け、数十年ぶりのチャレンジです。

しかし難しい。どうしても目が緩む、揃わない。
使用糸のGIZA70(対応棒針6~8号)に対し、5号でスワッチを編み始めてみたものの何度も何度もやり直し、最終的には2号で、それもかなり糸を引き気味に編み進むことに。
ここまで半月くらいかかりました。
さらに段数の割に増えていかない編み上がり面積と、表も裏もない苦行のような退屈さ。
このまま編み棒を抜いて雑巾にして捨ててしまいたいムシャクシャ感と闘いながら、トータルひと月以上かけてようやく編み終わりました。

 

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画像の右がSolwang、左が私が編んだもの。
まあ、そこそこな感じに見えますが、編み地を真上から撮ると違いは一目瞭然、がっちゃがちゃです。

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奥が深いな、ガーター編み。
そもそも糸が太かったかな。
次はもう少し細い糸で編もう。
グレーで鹿の子とかもいいな。

編み終えて早くもそう思い始めているのですが、次を編む未来の私に先に言っておこう。

 

きっと後悔するよ。