手しごとまわりのこと

靴下のことばかり考えて暮らした

作っていると何かを直したくなり、直していると何かを作りたくなります。
ただ気が散っているだけなのですが、こう書くと湧き出す泉感があるようなないような。

3月4月と作ることに集中していたので、GW明け以降はやたらいろいろ直しました。
破れたリュックの底を張り替えたり、ジーンズを補強したり、くるぶしを出したくてパンツの裾を切ったり、久々に金継ぎをしようと思ってやっぱり後回しにしたり。
そして最近は、誰かと会うたび「靴下の穴」の話をしているような気がします。

すぐに穴が空くけど手軽に直せるという理由で、靴下というのはとても好きなアイテムです。
手軽に直せるからこそ、長持ちする、かつ履いたときにゴロつきなどの不快感がない方法を考え、あれこれ試しています。

私が普段使うのは、①縦横に毛糸を渡して織物状に穴を埋めていく方法と、②チェーンステッチで丸く繕う方法。
靴下お直し界の二大勢力だと思われるこのふたつです。
あとはそれを組み合わせたり、Tシャツ生地を当て布にしたり。
靴下の素材にかかわらず、直す際にはウール100%の細めの毛糸を使うことが多いです(摩擦でフェルト化して丈夫になるため)。
別に編んだ円モチーフを縫い付ける方法も試したのですが、履き心地がイマイチで却下となりました。

 

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↑が昨年末に①で直した靴下。
縦と横で糸の色を変えるという洒落っ気を出したはいいものの、補修箇所の大きさに対して糸が細すぎて(パピーニュー2PLY極細)、思った以上に時間がかかってしまいました。
使う糸が細いほど着用時の違和感は少ないですが、やはりダメになるのは早いですね。
しかも今頃気づいたけど防縮加工糸…。
ところで左に写りこんでいる木箱と靴下の色味がわざとらしく同じですが、偶然です。

 

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↑が最近②で直した靴下。
履き心地は①に分があるのですが、ヤボッとした見た目が好きなので昔からよくやってます。
糸は今回初めて使ったウール50%ナイロン50%のSki Score中細。
フェルト化するウールと、摩擦に強く穴が空きにくいナイロンの合わせ技で、どれくらい耐えられるのかを試してみたいです(涼しくなったらね)。

 

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靴下のお直しに使うダーニングマッシュルーム。
と言いつつ、左端の草間女史的水玉はケニアの文鎮です。
テーブルの上に置いて使っても安定しているので、これはこれで便利。

ミシンでボタンホールのススメ

ミシンをお持ちの方で、自動ボタンホール機能を使ったことのある人は、わりと少ないのではないかと思います。
直線縫いやジグザグミシンなどと比べると、まず「押さえ」を交換するというハードルがあり、さらにあのカーテンレールとノギスが合体したような押さえの形そのものも、使いこなしづらいオーラが漂っていますから。

 

P1060608 (3)参考画像。左から通常の押さえ、ボタンホール用押さえ、ノギス。

 

ところでノギスっていいですよね。機能美の見本のよう。
大雑把の見本のような私にはハイスペックに過ぎますが、それでもたまには使いますよ。

 

さて、ボタンホール。
凝ったバッグや洋服を自作する以外では、好んで使う機会も理由もない、と私も以前は思っていました。
バッグも服もほとんど作らないので、長年この機能を使ったことがなかったのです。
でも、やってみると本当にすぐにできてしまうんですよ。
ボタンをひとつ付けるよりずっと早く。

ボタンホール自体は手縫いもできるし、ミシンで直線とジグザグを組み合わせて適当に縫ってもできますが、どちらもそこそこ面倒くさい。
このオートマチックハイテクシステムを使えば、押さえを取り付け印に合わせてポチッとな。
あとは放っておけば欠伸2回分ほどの時間でできます。
ちなみに我が家のミシンはそろそろ20年選手になりそうなbrother。
もう、ふたつの意味でブラザー。
それでもこの機能は搭載されています。
今のミシンはさらに簡単なのかもしれないし、押さえの形も親しみやすくなっているのかもしれません。

詳細な手順はミシンによって違うでしょうから説明書を読んでいただくとして、最近の使用例を。

 

 

P1060594 (3)古い羽織にボタンを付けた。

 

P1060601(2)着なくなったセーターの大きなポッケを切り取ってボタンを付けた。
隣の弁当箱は大きさ比較のために置いただけです。

 

あと、巻きスカートなんかのサイズ調整にもいいでしょうね。
「ここにボタンがあればいいのに」というところに迅速にボタンが付けられる、素晴らしい機能です。

ただ、失敗すると糸をほどくのが泣きたくなるほど大変です。
ドヤッと紹介した↑の羽織、生地が厚かったので二度も途中でミシンが止まりました(うち一度は針も折れました)。
必ず同じ生地、少なくとも似たような生地で試し縫いをしてください。
途中で止まるようなら縫い目を荒く調整してください。

 

ええ、どちらも説明書に書いてありますとも。

必死のパッチってなんだろう

唐突に季節感ゼロの話ですが、Vネックのセーターが好きです。
ずいぶん昔、真緑のVネックセーターを持っていて、V深め、裾と袖口のリブ長め、胸ポケット付き、と好きな要素が詰まったお気に入りの一枚でした。
しょっちゅう着ていたので、当時からの友人は未だに「カエルセーター」と話題にします。

このセーターにはもうひとつ特徴があって、両肘に楕円形の革があててありました。肘あて、エルボーパッチですね。
デザインとしては可愛いのだけれど、これさえなければ気軽に手洗いできるのに、と少し残念でもありました。セーターの肘なんて、そうそう破れないし。

と思っていたら、肘を破く人がいました、我が家に。

「カーディガンの肘に穴が空いた…」と無念そうに言われたとき、とっさに件のVネックセーターを思い出し、肘あての提案をしたらずいぶん喜ばれました。
こんなこともあるのねと、薄い革でパッチを作り、穴が広がらないようステッチをかけてから縫い付けたのが一昨年のこと。
ご覧のとおり、革ごと洗濯しているのがバレバレな見た目ですが、今のところ問題なく使えているようです。

 

P1050800(2)

 

で、今年、別のカーディガンにも穴が空きました。

え?また?
しかもまたカーディガン?
カーディガン着て匍匐前進でもしてるの?
外で七人の敵と戦っていることの体を張ったメタファーか何かなの?

次々ハテナが浮かびましたが、私がVネックセーターが好きなように、彼はタートルネックとカーディガンが好きなので、放っておくと下に着ているタートルの肘も破れかねません。
またあてますよ、肘パッチ。
そろりそろりと匍匐前進しているところを想像したら、かがる針にもリズム感が出るというものです。

 

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今回は古いベロアのパンツを切って使いました。
革を使うよりずいぶん作業は楽ちんです。
あ、洗濯もね。

他にも、コーデュロイやツイードのチェックなんかも良さそうですよ。
セーターやカーディガンの肘、いつも破れて困ります、という方はお試しあれ。

ヨレT星の住人と、その家族に捧ぐ

放っておくと何年でも同じTシャツを着続ける人たちがいます。
それは斬新なイラストのついたよそ行きTシャツではなく、特に品質のいい肌着Tシャツでもない。
たとえば3枚980円といった、いわゆる消耗品のTシャツです。

襟ぐりなど、とうにヨレヨレで擦り切れています。
「いい加減捨てたら」と提案すると、「苦労してやっとここまで育て上げたのに」と言わんばかりに憤慨します。
切り札「みっともない」をくり出そうものなら、まるで人間性を全否定されたかのような顔をします。

面倒くさいですね。
わかります。
我が家にもその星の人がいます。

仕方がないので、折衷案としてヨレT数枚で枕カバーを作りました。

彼らは丹精の賜物であるヨレクタな肌触りを失わず、われわれも来るべき「事ここに至るまで放置した自分を悔やむ日」に怯えずにすむ。
多少縫いにくくはありますが、上手くいかなくてもまるで気にならないという利点もあります。

枕カバーでも、クッションカバーでも、布団カバーでも。
ヨレTの在庫量に応じて、作ってみてください。
ちなみにサイズはかなり小さめで大丈夫ですよ。
際限なく伸びますから。
そしておそらく、ワンシーズンくらいで破れます。
なんせ元がヨレTですから。

もう、心おきなく捨ててください。

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「どうせ転ぶ」という前提が救うもの

小さいころ、新しいノートを買ってもらうと嬉しすぎて緊張し、なかなか使い始めることができませんでした。
肩に力が入っているものだから、いざペンを執ると自分の名前ですら間違えたり、なんかちょっと歪んだり。
そしたらもう辛くて、一転して見るのも嫌になってしまう。
子どもながら、このまま大きくなったら大変だぞ、と思ったかどうかは覚えていませんが、悲しいかな今でも新しいものが少し苦手です。

でも、そうそう緊張していられない。
いつからか開き直ったことで、ものとの付き合いがずいぶん変わりました。
そう。直せばいい。

ちょっとセンシティブぶって書きましたが、要は昔から落ち着きがないのです。
字は間違う。物は壊す。服は汚す。歩けば転び、走ればぶつかる。
注意力や空間把握能力を鍛えるよりは、直す方法を模索するほうが気が楽でした。
転ばぬ先の杖はたとえ電車に置き忘れても、転んだ先にはマットがあることを知っている安心感。
直すのが楽しくなってくれば、もう怖いものはありません。

もし似たような方がいらっしゃれば——きっとたくさんいらっしゃると思うのですが——、心の底からおすすめします。
直せばいいのです。

 

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取れなかった染みを水玉で隠すの巻。